安全JAWSちゃんのハートLetter
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ストレス対処能力「SOC」(その3)

前回、健康社会学者の蛯名玲子氏が著書「ストレス対処力SOCの専門家が教える“折れない心”をつくる3つの方法」でSOCの3つの感覚を「わかる感」「できる感」「やるぞ感」と呼び、この3つの感覚をそれぞれ高めていけば、 仕事や家庭でつらいことや大変なことがあっても「めげない自分」になることができると述べていることを紹介しました。では、この3つの感覚を高めるためにはどうしたらいいのか。今回は「わかる感」の高め方についてお話しします。

わかる感とは、「自分の置かれている状況を理解できている、または今後の状況がある程度予測できる」と感じられることです。わかる感が低いと、自分に起こった出来事に対して「どうして〜になるのかわからない」、「もしかして、 これから〜になるかもしれない」という考えから「不安」や「落ち込み」や
「怒り」などの感情が発生し、ストレスを感じることになります。

まず、わかる感を高めるための基本は「自分が理解できない、または予測できない出来事が起こったときに不安や落ち込みや怒りなどの感情が発生し、ストレスを感じることは自然な人間の反応であり、それを受け入れる」ということです。予測できない出来事が起こったときに不安な気持ちになるのは、人間が 本能的にもっている「危機管理能力」なのです。わかる感の低い人は、そのような気持ちを否定して「こんなことではいけない」とストレスに立ち向かおうとしたり、不安や落ち込みの感情を無視しようとしたり忘れようとします。不安や落ち込みは忘れようとすればするほど大きくなります。まずは、出来事に対してそのような感情が発生することを理解して、「これがストレスなんだ」と受け入れることが大切です。

次に、自分が理解できない出来事が起こって、「自分は周りの人に比べて能力が劣っているのではないか」という不安や落ち込みの感情が発生したときにやっていただきたいことです。それは、「誰か自分と同じ状況の人を見つける」 ことです。自分と同じ状況の人を見つけることができれば、「あの人もそうなんだ」、「私一人じゃないんだ」という安心感からストレスを感じることが少なくなるはずです。ただ、自分と同じ状況の人が見つからない場合、つまり本当に自分の能力が劣っている場合は、自分の努力で劣っている部分を補うようにすればいいのです。ただやみくもに「自分はダメだ」と落ち込むのではなく、自分の情報収集能力を高めて「自分と同じ状況の人を探す」というクセをつけるだけで、わかる感は高まります。

そして、わかる感を高めるために一番やっていただきたいのは「予測が難しい出来事に対して事前の準備をする」ということです。たとえば、「目が覚めたら夜中の3時で、なぜか真っ暗な山道にいた」という出来事が起こったとします。たぶん不安な気持ちにはなるでしょうが、ショックで気を失うほどではないと思います。それはなぜかというと、「あと3時間もしたら朝が来る」ことがわかっているからです。同様に、朝出かける前に天気予報を見て、「今日は雨が降る」、「今日の夜は寒くなる」とわかっていれば、傘やコートを持っていくことで不安は和らぎます。わかる感の低い方は、簡単にいうと「天気予報を見ない人」なのです。常に、予測が難しい出来事に対して事前の準備をするクセをつけましょう。

最後に、自分の言っていることと相手が言っていることに違いがあって、「あ
の人は何でこんなことを言うんだろう」と、相手が理解できないときにやって
いただきたいことをお話しします。それは、「相手に言うタイミングや方法を
考える」ということです。私が前職のときの経験をお話しさせていただきます
が、上司に仕事の報告をすると機嫌が悪く、「何で叱られるんだろう」と理解
できないことが続きましたが、それは単に上司が二日酔いの朝に報告にいった私のタイミングの悪さの問題でした。わかりやすい例は、男性が女性にプロポーズするときには必ず「タイミング」を考えますよね。また、企画書を持っていくと必ず「直し」を入れる別の上司には何回も企画書の書き直しを命じられましたが、「この人は企画書に自分の意見を入れたい人なんだ」と理解してからは、企画書を90%作って上司のところに行き、「ここだけが私の力ではわかりません」と言うと、「そこはこうした方がいいよ」と言われ、次に作り直した企画書を持っていくと、残りの90%のところはほとんど見られずに企画書が通るようになりました。このように、自分が理解できない相手に対しては相手に言うタイミングや方法を考えるクセをつけると、わかる感が高まります。

次回は「できる感」の高め方についてお話しします(その4に続く)。


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