安全JAWSちゃんのハートLetter
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エンプティチェア

今回は「エンプティチェア(空の椅子)」というカウンセリング技法をご紹介 します。エンプティチェアは仕事や生活で関わる誰かに対して、「言いたいこ
とがあるけど、いつも言いたいことが言えない」または「言わなくていいのに、 いつも言ってしまって後悔している」などの悩みがある方にやっていただきたい技法です。また、エンプティチェアは「自分自身でできるストレス解消法」としてもお勧めですので、是非お使いください。

エンプティチェアのやり方ですが、まずは椅子を2脚、用意します。和室であ
れば座布団2枚でもいいですし、リビングであればソファーの上にクッション
を2つ用意してください。次に、片方の椅子に自分が腰かけます。そして、自
分が座った椅子の向かいにもう1脚の空の椅子(または座布団やクッション)を置いて、その椅子に「自分が話したい相手がいる」と想定して、自分の伝えたいことを相手に伝えてください。言いたいことを伝えてもらったら、次に空の椅子(または座布団やクッション)のほうに移動します。今度は、自分が相手になったつもりで自分が言ったことに答えます。次に元の椅子に戻って、再び自分の言いたいことを空の椅子に向かって相手に伝えます。今度はまた相手側の椅子に移動して自分の言ったことに答えます。これを「これでもう十分だ」と自分が思うまで数回繰り返します。

たとえば、自分が嫌いな人が目の前にいると想定して、面と向かって言えないその人の悪口を言います。今度は相手側の椅子に移動して、相手になったつもりで「ゴメンなさい」と言います。再び元の椅子に戻って、さらなる相手の悪口を言います。次に椅子を移動して「ゴメンなさい」と言います。これをくり返しているうちに気持ちがスッキリしてきます。このように、エンプティチェアには「その人の前で言えなかった自分の気持ちを吐き出すことができる」というストレス解消効果があります。また、椅子の移動を何回も繰り返して、相手の立場で自分の言ったことに答えている間に「その時の相手の気持ちを理解できるようになる」という効果もあります。

たとえば、いつも門限を守らずに自宅に帰ってくる自分の娘に対して、母親が自分の怒りを抑えきれずに毎回怒ってしまうので、娘との会話も少なくなり、親子の関係が悪化しているとします。母親も「怒っていけないと思っているけど、娘の顔を見るとついつい怒ってしまう」と悩んでいます。ここで、母親にエンプティチェアをやっていただきます。(母)「何で門限を守らないの!」、(娘)「だって、友だちと食事をしていたんだから、途中で抜けるわけにいか
ないでしょ!」、(母)「でも、お母さんはあなたに何かあったんじゃないか
と心配なのよ!」、(娘)「確かに、お母さんの気持ちもわかるけど・・・」、(母)「まあ、あなたが友だちと遊びたい気持ちも理解できるわ」・・・。このように、相手の気持ちになって話すことで相手の気持ちが理解できるようになり、エンプティチェアを続けることで怒りのテンションも下がるようになります。

また、死に別れた大切な人に言いたいことがあったのに、その人の死に目に会えなかった場合などにもエンプティチェアは有効です。亡くなった人のイメージを呼び出して、そのイメージに対して、言えなかったことや言いたかったことを全てぶつけてもらうのです。たとえば、「あなたには本当に感謝していたわ、ありがとう」とか、「息を引き取る時にそばにいてあげられなくて、ゴメンね」など、言いたかったことを全て吐き出します。

このように、エンプティチェアには自分のストレスを解消する効果があったり、相手を理解することで今まで気がつかなかった自分に気づいて相手とのコミュニケーションが変わったり、後悔していることや悩んでいることの解決の糸口を見つけたりすることができるのです。是非みなさんもお試しください(終)。

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