安全JAWSちゃんのハートLetter
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ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
フローな人になる

私には、春が近づいてくると楽しみになることがあります。それは趣味の渓流釣りです。朝早くに釣竿を持って車で家を出て、山奥の川に向かいます。明るくなってきた頃に川に入り、あとはひたすら釣りを楽しみます。時には釣りに夢中になりすぎて「気がついたら5時間ほど経っていた」ということもあります。このように、何かの活動に集中して時間が経つのを忘れるほどのめり込んでいる精神状態を「フロー(Flow)」といいます。社団法人ポジティブイノベーションセンター(CPI)の「ポジティブ心理学セミナー」に参加したときに、CPI理事の太田哲二氏が「フロー」について、次のようにお話しされていました。

『たとえば、電車に乗って読書やゲームに夢中になっているうちに時間を忘れて降りる駅を乗り過ごしてしまったという経験をお持ちの方も多いかと思います。また、スポーツや趣味など何かの活動に夢中になっているうちにあっという間に時間が経って、気がついたら日が暮れていたという経験をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。そのようなときは、ある活動を最優先していて本当に集中し、楽しく充実感に満ちあふれています。そうした精神状態こそがフローです。

フロー理論は1970年代に当時シカゴ大学の教授だった心理学者のミハイ・ チクセントミハイ博士が提唱しました。フローとは「流れる」という意味です。
博士が何人もの人に「幸せな時ってどんな時でしたか?」とインタビューし、
多くの人が「流れているようでした」と表現したことから、「フロー」と名づけられました。心的エネルギーが滞りなく流れている状態です。

フローになると、人は最も生産性が高くなり、幸福感に満ちあふれ、驚くほど
短時間に上達したり、成果が上がったりします。仕事でいえば、一人ひとりが
充実感や幸福感を抱きながら仕事に取り組み、高い成果をあげながら成長している状態だといえます。フローは企業にとって組織の活性化に非常に有効な理論であることがわかります。』と太田氏は言っています。

チクセントミハイ博士は著書「フロー体験とグッドビジネス」(世界思想社)
で、人がフローを体験する条件として、高い水準への向上の機会(チャレンジ)と必要な能力(スキル)のバランスが重要で、両者のバランスがうまくとれているときにフロー体験が得られると言っています。たとえばピアノを弾き始めたとき、最初は簡単な曲を選択して一本の指で楽しんで弾いている。しかしスルが向上してくると簡単な曲を繰り返し弾くのに飽きてくる。そうすると、もっとうまく弾けるようになりたいとか、もっと難しい曲を選びたいという高い水準への向上の機会が生まれ、再びピアノを弾きはじめる。ピアノを楽しみ続けるためには、より高度なチャレンジを続けることが必要なのです。

仕事でいえば、毎日の仕事内容が自分のスキルで簡単にできるものばかりだったら、チャレンジが起こらずに仕事に飽きてしまって、仕事が「退屈」になってしまいます。逆に、自分のスキルよりも非常に高いレベルの内容だったら、チャレンジレベルがあまりに高くなるため仕事に「不安」を感じ、仕事がうまく進みません。フローが起こりやすいのは、仕事で「退屈」や「不安」に陥らないように、持っている仕事のスキルがアップしたときに少し高いレベルのチャレンジが与えられ、また少しスキルアップが起こったときに、続いて自分のスキルアップに合わせたチャレンジが与えられ、また次のスキルアップにつながっていくということがずっと続くときに、つまりチャレンジとスキルがともに高い意識で釣り合っているときにフローは起こるのです。

自分や人をフローな状態にする人のことを、フローな人という意味で「フラワ
ー(Flower)」と言うそうです。自分が働きがいを持って仕事をするだけでな
く、周りの人を楽しく仕事させることができるフローな人(フラワー)になれ
るよう、仕事のチャレンジとスキルのバランスを考えながら仕事に取り組んで いきましょう(終)。


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