安全JAWSちゃんのハートLetter
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ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
3つの自信

日本産業カウンセラー協会主催の講演会で下園壮太氏の「自信」についての話を聞いたので、その内容をご紹介したいと思います。下園氏は防衛大学校卒業後に陸上自衛隊に入隊。陸上自衛隊衛生学校で「コンバットストレス教官」として、医師や看護師などにメンタルヘルスに対する教育を行ってきました。現在はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長として、自衛隊勤務時に災害や自殺にかかわった経験に基づいた独自のカウンセリング手法を講演会や研修を通じて伝えてみえます。

下園氏によると、「自信」には3つの種類があるとのことです。第1の自信は
「課題ができる」という自信です。さまざまな体験や課題をクリアすることに
より、「自分はどれくらい対応できるか」とイメージができて、次の課題に対
して「できるか、できないか」の予測ができるようになります。第1の自信を
高めていくためには「成功した」「課題をクリアした」という成功体験を積み
重ねていくことが必要です。ただ、いくら成功体験を重ねても、その成功に対して「運が良かったから」「あの人のサポートがあったから」「誰がやっても
成功していた」という意識があると成功を喜ぶことができません。成功を喜ぶためには「自分の力があったから成功した」「自分が成長しているから成功した」という意識が必要です。これが第2の自信です。

第2の自信は「自分の力でできる」という自信です。人は子供のころからさま
ざまな課題をクリアしていきます。勉強もそうですが、身体の能力についても
「初めはできなかったことができるようになる」という「成長」という体験を
します。つまり、身体がうまく機能し、感情や行動が自分でうまくコントロー
ルできるという意識があれば「人生でうまくいく」と思えるようになり、第2
の自信が高まります。逆に、「今まではできたのに、できなくなった」「自分
の思い通りに感情や行動がコントロールできない」「他の人はみんなできるのに、自分だけできない」という体験をすると、第2の自信は低くなります。でも、そんな状況の中でも「課題はクリアできないけど、人間関係はうまくいっている」「家族や仲間が私を見守ってくれる」「最後は誰かが助けてくれる」
などと考えることができれば、「生きていける」という自信を高めることがで
きます。これが第3の自信です。

第3の自信は「人から愛されている」という自信です。生まれたばかりの赤ち
ゃんは何もすることができません。だから、第1の自信はありません。また、
排せつもうまくできませんし、「夜中に泣き叫ぶ」など感情のコントロールも
できないので、第2の自信もありません。なのに、私たちは「絶望している赤
ちゃん」を見たことがありません。なぜなら、赤ちゃんには愛してくれる親や
大人がいて、「何もできなくていいんだよ」「泣きたいときに泣いていいんだ
よ」と無条件の愛を与えてくれるからです。与えれた課題がクリアできなくて
も、今までクリアできた課題がクリアできなくても、「自分は一人ではない」
「私は守られている」と考えることができれば、「何とか生きていける」とい
う自信回復につながるのです。

現代の日本は第2・第3の自信を失っている人が増えています。それは「ネット社会」が影響しています。ネット社会は「世界中の情報を手に入れられる」 などという良い面も多いのですが、多くの情報を知ることで「世の中には自分よりすごい人や幸せな人がいて、自分はダメな人間だ」と感じたり、情報の変化に対して「自分はついていけない」と感じたりする機会が増え、第2の自信が失われます。また、ネット上で人を攻撃したり、その人のプライバシーを暴こうとするやり取りを見ることによって、「人は怖い」「人は信じられない」 「私の周りはみんな敵だ」などと感じる機会が増えることによって、第3の自信も失われているのです。

この「3つの自信」という自信のメカニズム、特に第2・第3の自信を理解し
たうえで、自信を失っている人に対して助言や支援をしないと、本人に自分の思いを受け取ってもらえなかったり反発されたりして、その人との人間関係に影響を与えることになるのです・・・。以上が下園氏から聞いた話ですが、詳しくは下園氏の著書「自信がある人に変わるたった1つの方法」(朝日新聞出版)をご覧ください。

さて、職場のリーダーの方に質問です。あなたは職場のメンバーに第1の自信 を中心に支援をしていませんか。目標を達成できなかったメンバーに「もっと 努力しなさい」「次は目標を達成できるよ」「終わったことは気にするな」などと言っていませんか。これでは第2・第3の自信を失っているメンバーの自信回復にはつながりません。第2の自信を失っているメンバーには「何が足りなかったのか一緒に考えよう」と話し合いをして、課題への不足点を明確にして改善することで「自分の力で何とかなる」という第2の自信を回復させる支援をしましょう。また、第3の自信を失っているメンバーには日頃から「何か 困ったことはない?」「仕事の調子はどう?」と声かけをして、カウンセラーのように「受容と共感」の気持ちで話を聴くことで、「自分は一人ではない」 「私は守られている」という第3の自信を回復させる支援をしましょう。

なお、このような自信回復のための支援は職場だけではなく、学校や家庭などの教育現場や医療や介護の現場にも応用できます。是非お使いください(終)



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