安全JAWSちゃんのハートLetter
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ハートLetterは産業カウンセラーキティこうぞうがお届けします。
仕事に必要なハートウェア

この「今月の一言」は今回が最後になります。今まで15年間、ありがとうございました。今まで多くの書籍や映画を紹介してきましたが、最後にご紹介するのは、私の人生において仕事に対する取り組み姿勢を教えてくれた「なぜか笑介」という漫画です。1冊の本が人の人生を変えるように、1冊の漫画が私の人生を変えてくれました。

聖日出夫(ひじりひでお)作の漫画「なぜか笑介」は、1984年(昭和59年)から「ビッグコミック・スピリッツ」誌(後に「スペリオール」誌)に連載され、その後タイトル変更をして「だから笑介」となり再連載され、その後は最終的に「社長大原笑介」とタイトル変更されて連載されました。

この漫画は、ほのぼのとした営業サラリーマンの奮闘記です。主人公は三流といわれている大学出身の商社マン「大原笑介」です。彼は天下に名をとどろかせる大手商社「五井物産」に入社し、食品2課に配属されます。ちなみにライバル会社は「四星商事」です。彼は特に秀でた特技があるわけでもなく、とび抜けた頭脳があるわけではありませんが、持ち前の明るさや優しさ、そして行動力でまわりの人から少しずつ認められていきます。取引先への営業活動や接待の中で、大原笑介は数々のトラブルや四星商事との競争に巻き込まれ、さまざまなドラマが繰り広げられますが、仕事に失敗し、周りの人から叱られ、誤解されながらも、最後には彼の一生懸命さが周囲を動かしていく様子が、いわゆる「人間力」の大切さを物語っています。

そして、決してエリートではなく「落ちこぼれ社員」だった大原笑介が次第に職場のメンバーから「この人がいないと仕事が進まない」、「こういう時、あの人だったらどう対処するだろう」と思われる「職場のキーマン」に成長し、いつしか「五井の食品に大原笑介あり」と言われるほどの存在になっていきます。また、仕事にも負けない彼のストレートな行動と言葉が、彼とは正反対に美貌と人望と学力を持つ「会社のマドンナ」のハートを射止めるところも、この漫画の内容を盛り上げています。

私はこの漫画を読んで、何事にも一生懸命に取り組み、チャレンジ精神ある大原笑介の仕事ぶりに、今から35年くらい前、私が新入社員時代に感動を覚えました。私にとって「なぜか笑介」は社会人としての心構えを教え てくれるバイブルだったのです。「なぜか笑介」シリーズは、基本的に一話 完結の短編集のような構成なので、どこからでも読み始められる気楽さがあり、また昭和の時代の「対人関係」や「仕事の進め方」などがふんだんに詰まっていて、私たち50代くらいの人間には懐かしく、若いころの仕事に対する自分の姿勢を振り返ることができますし、20代から30代の若い人間には新鮮で、年上の人たちとの様々な場面でのコミュニケーションに役立つ漫画だと思います。漫画本のビッグコミックス「なぜか笑介」、「だから笑介」、「社長 大原笑介」は小学館より発売中ですが、電子書籍でも発売中です。ぜひ一度お読みください。

さて、「今月の一言」の最後にあたって、あらためて自分の仕事に対する考 え方を整理したので、みなさんにお伝えしたいと思います。私は仕事を進め ていくのに必要なのは「ハードウェア」と「ソフトウェア」があると思っています。どんな仕事でも、道具や機械や物(商品など)という形のあるハードウェアと、知識や技術や情報という形のないソフトウェアを駆使して、優れた仕事の成果(パフォーマンス)を生み出していくことを目的にしています。私が働いていたデパートの仕事は、売り場や商品というハードウェアと販売員の商品知識や接客技術というソフトウェアを使って、売上目標の達成に向けて仕事をしていました。

ただ、仕事の成果を最大限に生み出すためには、この2つ以外に「ハートウ ェア」が必要だと思います。うまく言葉では表現できませんが、ハートウェアは仕事への取り組み姿勢や周りの人とのこころの繋がりや仕事に対する熱意や一生懸命さのようなものです。これは「目に見えるようでみえない」、 「形があるようでない」のですが、これが周囲の人から見えるようになると 仕事の成果が上がっていくという要素です。私は今まで仕事に取り組んで く中で、このハートウェアをいかに身につけていくかということに注力してきました。

私のハートウェアは漫画を読んだだけで身についたのではなく、今まで出会 ってきた数多くの恩師や先輩や後輩から教えていただいて身についたものです。58歳になった今、あらためて仕事に必要なこのハートウェアを再認識して、今後の仕事に取り組んでいきたいと思います。当分は、原稿執筆の仕事は中断しますが、また自分の中でみなさんにお伝えできることが見つかったときには再開することをお約束して筆を置きたいと思います。ありがとうございました(終)。

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