安全JAWSちゃんのハートLetter
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貪瞋痴(とんしんち)

毎年、年越しのときが近づくと、多くの寺から「除夜の鐘」が一斉に打ち鳴
らされます。除夜とは、「夜を除く」と書きますが、これは「煩悩に汚れた心の闇を一つ一つ取り除く」という意味で、その煩悩とは「三大煩悩」のことです。三大煩悩とは、「貪(とん)」と「瞋(しん)」と「痴(ち)」です。「貪」は、物欲、金銭欲、名誉欲などのさまざまな欲のことです。「瞋」は、すぐ腹を立てる怒りの心のことです。「痴」は、物事を正しく判断できない愚かさのことです。こうした三大煩悩「貪瞋痴」はすべての人が必ず持ち合わせています。その三大煩悩を細かく分類していくと百八になるのです。
そこで、除夜の鐘は百八つ打つことにより、百八つの煩悩を取り除いていく
という意味があるのです。

スリランカ出身の僧侶であるアルボムッレ・スマナサーラ氏は「貪瞋痴とス
トレス対処」などをテーマに多くの講演(法話)を行っていて、人間はそのときそのときに生じている貪瞋痴に気づき、「貪瞋痴で行動をすればストレスが生じる」という因果法則を理解することによって心は落ち着き、ストレスも緩和するとお話しされています。また、著書「欲ばらないこと」(サンガ新書)によると、貪瞋痴について以下のように説明されています。

「仏教では、三大煩悩の最初に『貪(欲)』をもってきています。『三大煩悩=貪瞋痴』について簡単に言えば、痴(無智)はベースではたらき、目立って見えるのは貪(欲)や瞋(怒り)です。欲と怒りはコインの表裏のようなもので、表側が『欲』です。欲が先なのです。ですから、欲が克服できれば、大幅に煩悩を克服できます。欲の克服は即、幸せにつながるものです。」 ・・・。

それでは、欲をうまくコントロールして克服していくためにはどうしたらよいのでしょう。スマナサーラ氏は「まずは『生きるために必要なもの』と『生きる上で欲しいもの』を区別することだ」と言っています。必要なものは苦労しなくても手に入りやすく、無い場合は他人がくれます。必要なものだけで生きると人生はとても楽です。ところが、欲しいものは思うようにそろわず、これが「貪(欲)」という煩悩を生み出し、さらに見栄や嫉妬や怒 り憎しみや人と競争する気持ちなどの「瞋(怒り)」というコインの裏面にある煩悩を生み出すようです。

また、スマナサーラ氏は「欲をコントロールするためには『私のもの』という錯覚に気づくことだ」と言っています。人間は自分に関係ない「他人のもの」を失ったり、傷ついたりしても悩みや苦しみを感じませんが、自分のこと、「私のもの」を失うとひどい悩みや苦しみを持ちます。「私とは何か」を客観的に調べ、私というのは幻覚だと気づくと、心が落ち着いて究極な幸福になるようです。

そして、スマナサーラ氏は「欲を抑える解決策は『少欲知足』だ」と言っています。つまり、あれもこれも欲しがらずに不満を持たないことです。生きるために必要なもの以外の欲しいものを自分の意思によりできる範囲でカッ トし、自分の生活が足りていることを知ることで、三大煩悩のベースではたらく「物事を正しく判断できない愚かさである痴(無智)」という煩悩がコントロールできるようになり、それにより貪(欲)や瞋(怒り)が克服できるようです。

貪瞋痴という煩悩に毒された心によって仕事や生活をするというのは、「何
か自分の利益のために『あれをやらなきゃ、これをやらなきゃ』とバタバタとどん欲に動き、イライラして感情のコントロールができずに、周りの人たちに不満を言いながらイヤイヤ行動をしている状態」でしょうか。もし、「バタバタ」「イライラ」「イヤイヤ」という言葉が自分に当てはまると思った方は、ぜひ今年の12月31日に除夜の鐘を突いて、自分の中にある煩悩を少しでも取り払いましょう(終)。


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