安全JAWSちゃんのハートLetter
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さよなら、ストレス

先日、一流スポーツ選手のメンタルトレーニングを実施しているスポーツド
クターの辻秀一氏の著書「さよなら、ストレス」(文春新書)を読みました。
辻氏は著書の中で「これまでのストレスマネジメントは、ストレスの海の泳
ぎ方を教えるもので、それではいつか疲れて溺れてしまう。大切なのは、ス
トレスの海から、ご機嫌の陸地へとあがること」と述べています。これを聞
いて、今から25年ほど前に映画館で観た映画「ウォーターワールド」を思
い出しました。

近未来が舞台の映画は過去に何本も見ていますが、この映画は温暖化で地球の陸地が沈んでしまった世界で「海の上で生活する人類」を描いているという設定が面白く、とても印象に残っている映画です。その後、アメリカに行ったときにユニバーサルスタジオ・ハリウッドの「ウォーターワールド」の
スタントショーも観に行きました。映画のあらすじは次の通りです。

地球温暖化により北極と南極の氷が解けて、陸地がすべて沈んだ未来の地球。
生き延びた人々は海の上に浮遊する島で身を寄せ合って生きていました。主人公を演じるのは俳優のケビンコスナーで、彼はこのような環境に適応して魚のように泳ぐことができるように進化したミュータント役で、耳の後ろに
エラがあり、手足には水かきがあります。彼は、その時代に貴重な真水や土
を食料品と交換しながら生活していました。彼が目指すのは、真水や土が自由に手に入る伝説の陸地「ドライランド」です。海賊集団との戦闘の末、彼はついにドライランドにたどり着きます。ところが、・・・このあとは映画
をご覧ください。

さて、ストレスの話に戻りますが、私たちは様々なストレッサー(ストレス
の要因)の中で仕事や生活をしています。ストレッサーには「他人」や「出
来事」や「環境」があります。職場でのストレッサーとしては「Aさんと人間関係がうまくいかない(他人)」、「仕事でミスが続く(出来事)」、 「屋外の仕事で暑い(環境)」などがありますが、これにより落ち込んだり、 イライラしたり、眠れなくなったり、胃が痛くなるなどの「ストレス状態」 に陥ります。これに対して、私たちはいろいろな方法でストレスマネジメン トをします。

たとえば、仕事でミスが続くという出来事に対して落ち込んだときには「ミ
スをしないように注意する」、「友だちに愚痴を聞いてもらう」、「音楽を聴いて気分転換をする」、「お酒を飲んで出来事を忘れる」、「『失敗は成功への道だ』とポジティブに考える」などの対処をします。これはストレスマネジメントの王道ですが、辻氏に言わせれば「ストレスの海を泳ぎ続けるための方法を覚える(教わる)」ことであり、いつかは溺れるリスクや不安を抱えながら仕事を続けることになります。または、先ほどの映画のように泳ぎ続けるために体が進化して、水の中で自由に泳ぐ能力を身につけて、その他のストレッサーにも対応ができるようになるかもしれません。いずれに しても、泳いだり休んだりしながら、一生ストレスの海を不機嫌な状態で泳ぎ続けることになります。

では、不機嫌な状態でストレスの海を泳ぎ続けることから脱出して、ご機嫌
の陸地にあがるためにはどうしたらいいのか。辻氏によれば、不機嫌なスト
レス状態を生み出すのは、外界に起こる「他人」や「出来事」や「環境」などのストレッサーに対して、その意味を考えて反応しようとする「意味付け」
をすることで起こるとのことです。意味付けは脳の認知機能である「認知脳」
が働いて起こります。一方、第二の脳である「ライフスキル脳」を働かせる
ことで、外界ではなく自分の内面に目を向けることができるようになります。
そして、様々なストレッサーに対して意味付けをせず、「ご機嫌な感じを生
み出すためにはどうしたらいいか」と考えるクセをつけていくことが真のス
トレス対策になると述べています。

たとえば、「明日朝5時に起きて出張に行かなければならない」という出来
事があるとします。認知脳は「朝5時は早いなあ」と意味付けをして「ゆううつな感情」を生み出します。「出張を断る」という判断ができればいいのですが、「上司に叱られるだろう」、「給料を減らされるだろう」という意味付けをして、「朝5時に起きよう」という判断をします。そして、「早めに寝よう」、「朝早いことなんか気にしない」、「漁師の朝3時よりマシだ」などと考えてストレス状態を緩和しようとします。その後も同じ「朝5時起き」が起こるたびに同じ対応をして、だんだんストレス状態は悪化していきます。もしかしたら、体が進化して朝5時に起きることが苦痛にならなくなるかもしれません。でも、不機嫌な状態は続くでしょう。

「ご機嫌の陸地にあがる」ということは、認知脳で「朝5時は早いなあ」と意味付けをするのではなく、ライフスキル脳で「朝5時は別に早くない(意味はない)」と考えると同時に、自分の内面に目を向けて「この出張でいかに自分が成長できるか」、「いかに社会や人に貢献できるか」と考え、「よし、朝5時に起きよう!」とご機嫌な状態を生み出すクセをつけることです。
辻氏によると、ライフスキル脳を繰り返し使うことで、多くのプロアスリートや経営者やビジネスマンがパフォーマンス向上につながっているようです。
みなさんも自分が認知脳を使って意味付けばかりしていることに気づいたら、 ぜひライフスキル脳を鍛えて、使ってみましょう(終)。

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